国土強靭化は必要です。
お元気様です。
5時45分起床
札幌は曇りです。
京都大学藤井教授のFacebookでのコメントを転載させていただきます。
野田総理は本当に公共事業の何たるかを理解してないね。
公共事業=バラマキという言葉を使えば支持がもらえると思っているんだね。
以下藤井教授のコメントです。
「日本国政府の首相」であられる野田氏の「首相官邸オフィシャルブログ」にて、野田氏がこの度のトンネル事故の県についてコメントをされています。
そのコメントは、日本国首相のコメントとは到底思えない極めて酷いものでありました。ついては、少々長文となりましが、本FB上(ならびに,それを公開している当方のホームページ上)で、正式に抗議申し上げたいと思います。
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野田首相へ:
野田首相は、ご自身のブログの中で,かの痛ましいNEXCOのトンネル事故の直後,
『これから求められるのは、老朽化対策などの「維持管理」にも力を入れ、精査の上で優先順位をつけて、真に命を守るために必要な投資を進めて行くことではないでしょうか。これは、「国土強靭化」といった美名のもとに、新しい道路や施設を作り続け、公共事業を総額ありきで増やし続けていく方策とは、全く異質なものです。』
とコメントされておられますが,このご主張には,極めて重大な事実誤認と,それに基づく国民の生命を失わしめる重大な政策論的誤謬が含むものであります.このご発言を撤回せず,この言葉に暗示されている野田首相の政策方針が採用される限り,残念ながら,今よりもより多くの国民の命が失われる未来が訪れる事は避け得ないものと考えます.
ついては,一国民として,このご発言に強い抗議の念を表したいと思います.
以下,その理由をご説明申し上げたいと存じます.
そもそも民主党政権下にて、公共事業関係費は30%も削られました。それが今回の事故と関連があるか否かはもちろん(少なくとも現時点においては)不明でありますが、30%もの予算削減のあおりを受けて、維持管理の質が大きく低迷していることは、現場の技術者ならば大半が理解している「真実」なのであります(もしそれをお疑いになるのなら,実際に全国の[公費に基づいて行われている]インフラ関係の現場に出向かれてお調べになられれば良いと思います.瞬時のその事実をご理解頂くことができることでありましょう).
では,なぜ,現場が維持管理の質を落とさざるを得ないか,おわかりになりますでしょうか?
そもそも公共事業関係費の中には、「維持管理」意外に「真に命を守るための事業費」がたくさん含まれているのです。だから、維持管理以外も、そうやすやすと事業費を削減する事などできないのです。
たとえば、堤防もダムも命を守るものです。日本経済のための道路や橋も、経済を支え、雇用を支え、結果、中長期的に人々の命を守るものではありませんか。
そうである以上,総額が30%削られたことで「守られるはずだった命が削られた」ということになることは,論理を一定程度ご理解いただける方であるならば,ご理解いただけるのではないでしょうか?
しかも,野田首相の上記ご発言は「国土強靱化は真に必要なものではない」ということを強く主張しておられるものであります.
しかし野田首相はご存じ無いのかもしれませんが、国土強靱化には,明確にインフラの老朽化対策が含まれているのです。さもなければ、インフラが強靭化しないからであります。
そして,インフラの老朽化対策をすれば,国民の生命を守るための強靱化が果たされるわけではないのです.国民の生命を守るために果たすべき国土強靱化には,巨大地震対策のための(野田首相の上記ご発言では無駄であるという趣旨で指摘されている)「新しい道路や施設の整備」もまた,不可欠なのです.例えば紀伊半島や東海,四国太平洋沿岸域をはじめとした大津波が危惧されている地域の「新しい道路」や「新しい堤防」は,国民の生命と財産を守るためには不要だとおっしゃるのでしょうか.
そうである以上,野田首相の上記ご発言は,「国土強靱化」の内容についての完全なる誤解に基づくものであると断ぜざるを得ません.
一国の首相が,(国土強靱化という)現実に国会にその「基本法」が法案として提出されている重要政策に対して,完全なる事実誤認をし,しかも,その上で,誤謬に満ちた批判を繰り返すというのは,著しく不当なる振る舞いと言わざるを得ません.
とりわけ,その法案が「国民の生命と財産を守る」ためのものである以上,一日本国民として,日本国首相のこのご発言に,極めて強い遺憾の念を抱かざるを得ません.
ついては是が非でも,上記ご発言を撤回なさいますよう,強く要請いたしたいと思います
さらに,野田首相は、以上に続けて、次のような発言を続けておいでであります。
『バブル崩壊以降の過去20年間、無駄な公共事業のバラマキを続けましたが、それによって日本経済が力強さを取り戻すことはなく、国の借金だけが増えていきました。その愚を繰り返してはなりません。』
一国の首相ともあろうものが、ここまで,「公共事業」というものについての決定的な事実誤認を積み重ね、その上で品性無き罵詈雑言の部類とも言いうるような「バラマキ」という言葉でもって,公共事業をご批判されるようなことがあってもよいものなのでしょうか。
第一に、今日の借金を増やしたのは、公共事業ではなく、社会保障費です。今日の社会保障費は、公共事業関係費の4倍程度もの水準になっているのです。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20110128/218184/?rt=nocnt
第二に、「無駄な公共事業のばらまき」という台詞は、(過去20年間の)おおよそ全ての公共事業が無駄であり、かつ、明瞭な目的無き無意味な代物であるかのような印象をもたらす、極めて不適当な言葉であります.
これは,一国の首相としてのご発言として,極めて重大な疑義を孕むものであります.
そもそも仮にもそこまで一国の首相が強く主張するのなら、(「いくつか」というレベルではなく)「おおよそ」の公共事業が「無駄」な「無目的なバラマキ」であったという「証拠」を見せるべきではないでしょうか.しかしながら,筆者は確信しますが、そのような証拠を、野田首相は並べ立てることは不可能であろうと思われます。なぜなら、過去15年間の事業は、当然ながら、政府による「査定」されて実施されたものだからです.その中には,野田首相が率いる政府が査定したものも含まれているのであります。さらに言うなら、過去15年の事業費には、野田首相が主張する維持管理費も含まれているではありませんか。
第三に、バブル崩壊以降の公共事業がなかりせば、日本経済は、今よりももっと酷い状況になっていたことは明らかです。たとえば、アメリカの大恐慌来、緊縮財政を行ったフーバー大統領期には,たった数年でGDPは四分の一以上も毀損したのが歴史的な事実なのです.一方で,ルーズベルト大統領が徹底的な公共事業の拡大を行ったことで,同じく数年で同様の水準にまで経済は回復しているのです.このことは,バブルが崩壊して「直後」に公共事業をおこなったことで,経済規模が二割や三割という水準で低下することが回避されたであろうことを指し示す歴史的事実だと解釈することができるでしょう.
http://blogs.yahoo.co.jp/silkroad_desert9291/48548254.html
(あるいは、今日の日本のデフレ不況下における公共事業の経済効果については、下記文献に報告されている統計分析をご参照願いたく存じますhttp://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/images/stories/PDF/Fujii/201207-201209/underdeflation.pdf)
以上より,今回の野田首相のご発言は,「老朽化」を原因とした痛ましいトンネル事故が起こった事実を目の当たりにしたにも関わらず,「老朽化対策を妨げている政治的理由」を考えんとする態度を全て放棄する著しく不当なる振る舞いであると言わざるを得ないものです.しかもそれのみならず,そうした「老朽化対策」をさらに「妨げる事」を「推奨」するかのような恐ろしきものですらあります.
そうである以上,こうした一国の首相のご発言は,文字通り「暴言」と呼称してなんら差し支えなきものであるに違いありません.なぜなら,このような野田首相の態度が続けられる限り,失われずに済んだであろう数多くの国民の命が,これからも失われ続けていく事とならざるを得ないからであります.
国民の生命を守ることこそが,一国の首相の最重要責務であるという一点を踏まえるなら,こうした野田首相のご発言は,一国民として,絶対に看過し得ぬものであります.ついては一国民として,今回のご発言に対して深い遺憾の念を表明申し上げた上で,今回のご発言を全面撤回されることを,強く強く要請申し上げる次第であります.
以上
平成24年12月5日
京都大学大学院教授 藤井聡